2033年6月13日(火)

2023年6月13日(火)


『甘い毒』

超自然的存在を否定する社会は、たいてい最後は自然的なものを超自然的な地位にもちあげることになる。

アニー・ディラードが、昆虫学者が厚紙に彩色したレプリカを使って、雄の蝶を誘惑する実験の話をしている。

レプリカの蝶は、その種の雌蝶より大きく誘惑的だ。
雄の蝶は興奮して厚紙に何度もよじ登る。
「そのそばで、生きた本物の雌蝶が虚しく羽を開いたり閉じたりしている。」

C・S・ルイスは、これと似た人類の傾向を表すのに、「偽りの神の甘い毒」という表現を用いている。
私たちは、聖なるものの代替物、あるいは無限の代替物に、この幻滅した世界の虚しさを埋めさせている。

今日、偽りの神の中でセックスは最も露骨なもののようだ。
創刊の数年後、『プレイボーイ』誌に織り込まれている見開きページを初めて見たとき、私は仰天した。
そのページは神秘のベールを剥いで、思春期の私を誘惑と約束に満ちた未踏の世界に招き寄せた。

『プレイボーイ』誌が大胆さを他に譲って久しい。
今では遺物のようなものだ。

セックスについて、あれこれうるさく言うつもりはないし、中世のモラリストのように畏縮するつもりもない。
現代の西洋社会はセックスを神聖な地位にまで高めてしまったのではないかと言っているだけだ。

実際、『スポーツ・イラストレイテッド』誌は、水着姿の美女たちを「女神」と呼んでいる。
またランジェリー専門店の「ヴィクトリアズ・シークレット」は、スーパーモデルたちに天使の衣装を着せている。

前の世代は処女と禁欲を尊重した。
しかし今、私たちはセックスを最高善や魔法がかった誘惑として差し出し、広告主はそれを使って、車やコーラや歯磨き粉を買わせようとしている。

知り合いの牧師が言った。
広告やロックミュージックのビデオにセックスの超越的な力が描かれているが、それはどうかと思う、と。

調査報告からすると、毎日の通勤電車で会う三、四人のうち、一人は前の晩にセックスをしたことになる。
しかし彼らの顔を見るかぎり、これといった違いは見られない。
より幸せそうでも、満たされているようでも、変化があったようでもない。

「セックスのように強力なものには、もっと持続的な効果があるはずではないか。
独身の牧師だからこう思うのかもしれないが。」

God Bless You!!


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