2023年9月6日(水)
『夜空を仰いで』
かつて輝くばかりの天の川を見たことがある。
赤道直下のソマリアの難民キャンプを訪れたときのことだ。
天の川は漆黒の天蓋にダイヤモンドの粉を敷き詰めた高速道路のように広がっていた。
街路灯から遠く離れ、暖かい砂の上に仰向けになって空を眺めたあの夜ほど、空がだだっ広く、地球が大きく思えたことはなかった。
私は当時、大規模な難民の出た地域にいて、日がな一日、救援スタッフにインタビューしていた。
クルド人のキャンプ、ルワンダ、スーダン、エチオピア———ところは変わっても、現地の惨状は酷似していた。
痩せ衰えて乳の出なくなった母親、泣き叫び死んでいく赤ん坊。
荒れ果てた地に薪にする枯れ木を探し求める父親の姿……。
三日の間、悲惨な人々の話を聞いて回った私は、「アフリカの角」と呼ばれる地域の片隅にある国の、辺鄙な難民キャンプから目をそらすことができなかった。
天の川を見るまでは。
天の川を見た途端、今の情況が人生のすべてでないことに気づいた。
歴史は進む。
部族、国家、あらゆる文明も興っては滅び、惨めな様を残していく。
しかし、私は努めて周囲の苦難ばかりを見ないようにした。
夜空を仰いで星を眺める必要があった。
「あなたはすばるの鎖を結ぶことができるか。
オリオン座の綱を解くことができるか。
あなたは十二宮をその時にかなって、引き出すことができるか。
牡牛座をその子の星とともに導くことができるか。
あなたは天の掟を知っているか。
地にその法則を立てることができるか」。
神は、ヨブという名の男に、これらの問いを投げかけられた。
ヨブは深い苦悩にとらわれていて、自分のかゆい皮膚しか目に入らなかったが、神はこういったことを思い起こさせて、見事に彼を立ち直らせた。
皮膚はまだかゆいままだったが、ヨブは一千億の銀河を心に留めている神の偉大さを垣間見たのだった。
ヨブ記の神の言葉は、ずいぶんぶっきらぼうに聞こえる。
しかし、おそらくこれがヨブ記で一番大切なメッセージなのだろう。
ちっぽけな人間は自分の不服にどれほどの価値があるかも考えず神にくってかかるが、宇宙の主は不愛想に答える権利をもち合わせておられる。
ヨブの子孫である私たちも、広い視野を失わないよう努めたいものだ。
広い視野を得るには、月のない、星の輝く夜が一番いい。
God Bless You!!
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