2023年9月16日(土)
『神なき善』
『プラウダ』紙の編集者たちは、キリスト教と共産主義には共通の理想が多くあるのに、と残念そうに話していた。
共産主義を「キリスト教の異端」と呼ぶ人もいる。
平等、分かち合い、正義、人種間の融和を強調しているからだ。
けれども、ロシア人がマルクス主義を信奉していた過去を嘲笑的に言う「どこにも行かない道にいた74年間」という言葉は、人類史上最大の社会実験にはひどい欠陥があったことを教えている。
古典的マルクス主義者は無神論を説き、宗教に抗して猛然と闘った。
それは、「抑圧者に暴力をもって立ち向かえ」と労働者を鼓舞するため、という賢明な理由からだった。
マルクス主義は、この世を超えた天国に生きる望みと神の懲罰という恐れを断ち切らなければならなかった。
ルーマニア人牧師ジョセフ・トンが、マルクス主義の人間観の核心にある矛盾について、こう書いている。
「生徒たちに、人生は物質の偶然の組み合わせの産物だと彼らは教えている。
人生は、ダーウィンの適者生存の法則に支配されている、と。
死後の世界もなければ、自己犠牲に報いたり、エゴイズムや貪欲を罰したりする『救世主』もいない。
このように教えられた生徒たちのもとに私は送られ、気高く立派な人間になれ、と教えなければならなかった。
彼らが全精力を傾けて善行に励み、良い社会を作るように、と。
しかし、彼らには善を行うための動機が欠けている。
純粋に物質的な世界では、自分のためにつかみとる人間だけがすべてを所有すると考えている。
なぜ自分を否定し、正直であるべきなのか。
他者のためになる人生を送ろうとするには、彼らにどんな動機を提供すればよいのか。」
『プラウダ』の編集者たちは、人々にあわれみを示したいと思わせることがきわめて困難であったことを認め、こう尋ねた。
「どのように人々を変革し、動機づければよいのでしょう。」
この国全土が抑うつと絶望の状態にあるように見えた。
「善良である必要がないほど完璧な社会を、だれもが求めている」と言ったのは、マルクス主義の夢を信奉している多くの友人を目にしたT・S・エリオットだ。
ソ連の指導者、KGB、そして今『プラウダ』から私たちが聞いたのは、ソ連が二つの意味で最悪の結末を迎えたことだ。
社会が完璧に程遠いこと、そして人々がいかに善良になるかを忘れてしまったことだ。
God Bless You!!
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