2023年7月21日(金)

2023年7月21日(金)


『政治の悔い改め』

1990年、国際政治の舞台で赦しのドラマが上演される様を世界中が目にした。

東ドイツで初の自由選挙が行われ、政権を担うべく選ばれた議員が招集された。
共産圏は日々変化しており、西ドイツは、再統一という革新的な一歩を提案している。

新議会には検討すべき国家の重大問題が山積していた。

ところが議員たちが最初の公務として行ったことは、次のような意外とも思える声明を採択するかどうかを決めることだった。

それは政治学用語ではなく神学用語で書かれている。

「ドイツ民主共和国初の自由選挙で選ばれたわれわれは……この国の市民を代表して、ユダヤ人の男性、女性、子どもたちに屈辱を与え、追放し、殺害した責任を認める。

われわれは悲しみを覚え、慙愧の念を抱き、このドイツの歴史の責任を認識する。
……国家社会主義の時代に、測り知れない苦しみが世界の人々に加えられた。
……われわれは世界中の全ユダヤ人に赦しを請う。
われわれはイスラエル人民に赦しを願う。

東ドイツの公の政策がイスラエルに対して欺瞞と敵愾心をもってなされたことを。
そして1945年以降も、わが国のユダヤ人市民を迫害し、侮辱を与えてしまったことを。」

東ドイツ議会はこの議案を全会一致で可決した。
議員たちは立ち上がって、しばらくの間拍手をした。
それからホロコーストで亡くなったユダヤ人に思いを馳せ、黙薦した。

何が議会にそうした行為をとらせたのか。
もちろん、それで殺害されたユダヤ人が生き返るわけでもないし、ナチズムの犯した非道な行為が帳消しになるわけでもない。

だが、このことは、半世紀近くも———政府が頑なに赦しの必要を否定していた50年間———東ドイツ国民に息苦しい思いをさせてきた罪意識の締めつけを緩める一助にはなった。

西ドイツは、戦時中の忌まわしい行為に対し、すでに公式に悔い改めを行っていた。
さらにユダヤ人に三兆円の補償金を支払っている。

ドイツとイスラエルとの間にとにかく関係が成り立っている事実は、国境を越えた赦しを実証している。
恵みは国際政治においてさえ、その力を発揮する。

God Bless You!!


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