2023年7月13日(木)

2023年7月13日(木)


『だれも教えられなかったこと』

他者の痛みを尊重しようとどんなに頑張っても、全く無意味に思われる苦しみに出合うことがある。
特に思い浮かべるのが、一人のアルツハイマー病の男性だ。

父親の面倒を見ようとする娘は、かつて父親であった人の悲しい抜け殻に接して毎日激しい心の痛みを覚えている。

知能指数が30から40の間という重度の障がい児のことも思う。
その子はたとえ長生きをしても、専門家の高額なケアを受けながら、ベビーベッドにじっと横たわり、しゃべることも理解することもできずに時間を過ごす。

「彼らが生きていて何になる。
彼らの人生に何の意味があるだろう。」

ユルゲン・トロギッシュ博士は問うた。
重度精神障がい者を診る小児科医だ。
博士は長年、その質問に答えることができなかった。

ある年、新しい介助者を教育する入門コースを教えることになった。
一年間の教育期間の最後に、若い介助者たちにアンケートに答えてもらった。

設問の中には、こんなものもあった。

「障がい児と全面的に関わるようになって、人生にどんな変化がありましたか。」
以下に、答えのいくつかを記す。

*人生で初めて、何か本当に意義あることをしていると感じています。
*以前はとてもできないと思っていたようなことも、今ではできる気がします。

*ここにいた間に、ザビーネに愛されるようになりました。
障がい児と関わる機会を得てから、もう彼女を障がい児とは思わなくなりました。

*人間の苦しみに前より応えられるようになり、助けたい思いが生まれています。
人生で本当に大切なものとは何かを考えるようになりました。

*忍耐力が強まりました。
自分自身の小さな問題など、もうそれほど重要ではなく思えて、欠点の多い自分のことを受け入れられるようになりました。
何より、人生の小さな喜びに感謝するようになりました。

トロギッシュ博士はこうした反応を読み返しながら、自身の疑問に対する答えに驚いた。
あの子どもたちの苦しみの意味は、他者の人生、自分のヘルパーたちの人生の中で明らかにされつつあった。

ヘルパーたちは、どんな洗練された教育システムも教えることのできない教訓を学んでいたのだ。

God Bless You!!


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