2023年6月4日(日)

2023年6月4日(日)


『非暴力という武器』

映画『ガンジー』(R・アッテンボロー監督、1982年)に、ガンジーが新しい哲学を、長老派の宣教師チャーリー・アンドリュースに説明しようとする素晴らしい場面がある。

二人は南アフリカの街を歩いていたとき、若いごろつき連中に道を塞がれる。
彼らを一目見るなり、急ぎ逃げようとするアンドリュース牧師をガンジーは制して言う。

「新約聖書に、『あなたの右の頬を打つ者には左の頬を向けなさい』と書かれていませんか。」
アンドリュースは口ごもりながら、「その言葉は隠喩的に使われていると思うのですが」と答える。

ガンジーは言う。
「よくわかりませんが、イエスは勇気を見せるべきだと言ったのではないでしょうか。
つまり、一発か数発殴らせて、殴り返すつもりも、逃げるつもりもないと示すのです。
そうすれば、人間の本性の中にある何か、相手の憎しみを減らし、尊敬の念を高める何かに訴えることになります。

キリストはそれを理解していたと思います。
そして、私はその働きを見てきました。」

ガンジーの心に深く刻まれたこの感性はやがて、しっかりした教義へと形をなしていった。
相手が丸腰の群衆に発砲する兵士であったとしても、他者への暴力は、普遍的な人間の尊厳についてガンジーの信ずるすべてと矛盾するものであった。

暴力によって人の信念を変えることはできない。
暴力は人を残忍にし、分断する。
和解することがない。

非暴力運動の中で支持者が暴力的になることがあれば、ガンジーは運動自体をとりやめるだろう。
どれほど正しくても、流血を肯定する大義など存在しない。

ガンジーは結論した。
「私はこの大義のために死にますが、大義のために殺すことはありません。」

ガンジー以来、多くの政治指導者たちもこの戦略を採用してきた。
マーティン・ルーサー・キング・ジュニアは、自らをガンジーのたましいの継承者と考え、インドを訪れてからこの方法を米国に導入した。

キングをはじめ何人かの非暴力は、比較的開かれた社会では劇的な成果を挙げたが、ナチス・ドイツや現代中国やミャンマーなどではどうだろう。

それらの国では、軍事政権があらゆる抗議を鎮圧している(皮肉にも、ガンジー自身の宗教を継承するヒンドゥー教の指導者の中に、この原理はキリスト教の影響から生まれたものであり、ヒンドゥー教徒の中にはないとほのめかす人々がいる)。

倫理学者、政治家や神学者たちの間では、軍隊が正当化されるかどうか、正当化されるならどういう場合か、意見が分かれたままだ。

しかしガンジー以降、非暴力が変革に与えてきた影響は否定できない。
地球で人口が二番目に多い国に、非暴力が自由をもたらしたことは事実なのだから。

God Bless You!!


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