2023年6月25日(日)

2023年6月25日(日)


『作家の生活』

シカゴに住んでいたころ、妻は極貧層のお年寄りの援助プログラムを担当していた。
わが家の夕食時の典型的な会話はこんな具合だ。

「ジャネット、きょうはどんな一日だった?」

「もう大変。リンカン公園に住んでいたホームレスの一家に会ったのだけど、この人たち、まる三日何も食べていなかったの。
この家族の世話をしてから、八十九歳のペグ・マーティンが亡くなったと知らせを受けて、それから非行グループの一味が教会のバンを荒らして、スプレーでそこら中落書きをしていったのを発見したわ。」

こういった冒険談を事細かに話し終えたあと、ジャネットが私の一日を尋ねる。

「えーっと、きょうは何かあったかな?
一日中パソコンの画面とにらめっこしていたよ。
ああそうだ———とてもいい形容動詞を思いついたよ。」

私たち夫婦の毎日は、性格の違いはさておき、だいたいこんなものだ。
陽気で活発で人といるのが好きなジャネットは、ヒル・ストリートにある事務所を拠点に働いている。

彼女の毎日はスリルと人間とであふれている。
一度に七十人分の食事を配ることもよくあるし、ほとんど毎日のように数十人の世話をしている。

コロラドに引っ越してから、妻はホスピスで働き始めた。
入院を許された患者はたいてい十日以内に亡くなる。

今ではジャネットが、勇気、激怒、絶望と様々な反応を示した家庭の物語をもち帰る。
その物語はみな深い悲しみに追いやられた劇場に彩られている。

一方、シカゴだろうがコロラドだろうが、私は自宅地下室の仕事場で完璧な言葉を探しながら、ちらつくコンピューターの画面を見つめている。

一日の最大の「出来事」は昼ごろに起こる。
郵便屋が来ることだ。

たまに電話が鳴る。
そして、一週間に一回かそこら、だれかと昼食を共にする。
作家の毎日とは人が想像するほど魅力的なものではない。

God Bless You!!


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