2023年6月18日(日)

2023年6月18日(日)


『神の音楽』

ヨハン・セバスティアン・バッハは、ルターが聖書をドイツ語に翻訳したヴァルトブルク城のすぐ近くで生まれ、教会といえばバッハと言われる作曲家になった。

神ご自身———裕福なパトロンでなく———が音符もフレーズもすべて細かく調べられたかのように曲を作り、ほとんどの楽譜のはじめにJJ「イエスよ、お助けください」、最後にSDG(Soli Deo Gloria「栄光はただ神の上に」)と書かれていた。

バッハの作品中、マタイ受難曲はドイツ語で書かれた最高の合唱曲だと一般に言われている。
けれども、バッハの時代に一度しか演奏されず、反響もほとんどなく、その後百年間、全く演奏されなかった。

そして1829年、フェリックス・メンデルスゾーンが師から楽譜を入手する。
二束三文の原稿でチーズを包んでいた商人から買ったものだったと伝えられている。

メンデルスゾーンはマタイ受難曲のリバイバル演奏を行い、それ以後途切れることなく続くバッハへの熱狂の波を解き放った。

その不朽の名作を夏のコンサートで聞いた。
シカゴ近郊のラビニア公園で行われた、シカゴ交響楽団と合唱団による演奏で、三千人が集まり四時間の演奏を聴いた。

聴衆の思いがけない組み合わせに驚かされた。
上流階級の後援者たちのそばに、汚いデニムの上下に身を固めた人たちが同じくらいおり、シカゴの北海岸に住むユダヤ人が全体に散らばっていた。

この人たちがみな、マタイの福音書に基づきイエスの十字架をそのまま語り直す演奏に聞きほれていた。

その場面はどう見ても、カルバリの埃っぽく血なまぐさい夜とかけ離れていた。
しかしどういうわけか、この巨匠は魅力を織り込んでいた。

演奏家たちはその暗い一日の苦しみと恐怖と、それが全人類にもつ深遠な意義を伝えていた。
恐ろしい釘や茨の棘の痕を、口角泡を飛ばして語る南部の福音派の人たちよりも遥かに上手に伝えていた。

その演奏の及ぼした衝撃はどれほど大きかったことだろう。
クラシック音楽に刺激されてリバイバルを経験した教会など聞いたことがない。

しかし、偉大な音楽家が、歴史を二分したある出来事を表現しようと苦心惨憺して創り上げた作品は、一信仰者である私に感動をもたらした。

崇高な芸術が、私たちの中に真の対象への渇きを目覚めさせる「恵みの滴り」を表しているなら、正しい巨匠の下でそうした滴りは、神の臨在があふれんばかりに押し寄せるものとなり得るのだ。

栄光はただ神の上に。

God Bless You!!


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