2023年3月30日(木)

2023年3月30日(木)


『有刺鉄線の向こうにある希望』

ヴァージニアで出会ったユルゲン・モルトマンは、私にとって英雄の一人となった。
このドイツ人神学者には、その学問的業績からは想像もつかないような魅力とユーモアのセンスが滲み出ていて、非常に驚かされた。

モルトマンは量子物理学の研究者として生きるつもりだったが、第二次世界大戦のさなか、十八歳で兵隊にとられる。

ハンブルク空襲で仲間が目の前で焼死した。
「自分はなぜ生き残ったのか」と苦しんだ。

イギリスに降伏した後、モルトマンは三年間をベルギー、スコットランド、イングランドの収容所で過ごした。
ナチスの真実を知ったとき、どうしようもない深い悲しみを人生に感じた。

キリスト教の教育を受けなかったモルトマンに、米国人チャプレンが軍発行の詩篇付き新約聖書を差し出した。
ルーズベルト大統領の筆跡で「私が臥所を地獄につくっても、あなたがそこにいるのを見る」とあり、囚人たちに読まれていた。

神はその暗い場所におられるのだろうか。
読み進めるうちに、荒れすさんだ気持ちを完璧にとらえた言葉に出合い、神は「有刺鉄線に囲まれたところにもおられる——いや、有刺鉄線に囲まれているところにこそおられる」と確信するようになった。

後にモルトマンはノートン収容所という、YMCAの営むイングランドの教育施設に送られる。

地元の人々はドイツ人捕虜を歓待し、手料理を差し入れ、キリスト教の教理を教え、ナチスの暴虐に対して捕虜の感じていた罪意識をさらに深いものにさせることはなかった。

モルトマンは解放後に「希望の神学」を語りだす。

私たちは十字架と復活の間の矛盾した状況に生きている。
腐敗に取り巻かれながらも回復する希望がある。
キリストの復活という「前もって現された輝き」に照らされた希望がある、と説いた。

イエスはこの星が神のもともとの設計どおりに回復される未来の時を、前もって味わわせてくださっている。
イースターは「贖われた者たちの笑い声……死に対する神の抗議」の始まりだ。

未来への信仰をもたない人は、この星の苦しみを見て、神は全き善でもなければ全能でもないと思うだろう。
けれども私は未来への信仰があるので、神もこの世に満足しておられないこと、そしてすべてを新しくしようとしておられることを信じることができる。

聖金曜日からイースターまでの大きな距離を表現しているユルゲン・モルトマンの言葉がある。
「私たちがいつか神とともに笑えるように、神はいま私たちとともに泣いておられる。」

God Bless You!!


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