2023年2月25日(土)
『最も長い一日』
〔2月24日の続き〕
日曜日の朝、ロス・アラモスからデンバーの自宅に向かって車を走らせていた。
コロラド州境を少し越えた辺鄙なところで小道を曲がったのは、何よりいろいろな景色を楽しみたかったからだ。
数日前に雪が降ったので、幾度か路上に雪渓を見て驚いた。
突然、坂を下って曲がり角に出たとき、運転していたフォード・エクスプローラーの車体が揺れ始めた。
必死にこらえたが、右後輪が道路を脱輪し、柔らかい土に食い込んだ。
エクスプローラーは横転を五回も繰り返した。
耳をつんざくような音、ガラスやプラスチックや金属が一度に割れるものすごい音がした。
窓はすべて粉々になり、スキー板、ブーツ、アイススケート靴、ノートパソコンその他の荷物がコロラドの田舎道にまき散らされた。
やがて車は上を向いて止まった。
イグニッションを切り、シートベルトを外し、壊れた屋根の下で身を屈め、土の上に這い出た。
鼻血が出ていたし、顔、両足、両腕に怪我をしていて、背中の上部、首のすぐ下に焼けつくような痛みを感じた。
持ち物は百メートルも向こうに投げ出され、ノートパソコンと携帯電話を捜しながら、人気のない土地をさまよった。
数分後に一台の車が止まった。
身なりの良い夫婦が下りて来て、現場に駆けつけ、指示を出し始めた。
二人とも、資格をもつ救急医療技術者で、ご主人は米国救急隊の隊長だった。
二人は私を自分たちの車に連れて行くと、救急車を呼び、そばに座って私の頭を固定し、支えてくれた。
「日曜日の朝に、どうしてこんな辺鄙な道を通られたのですか。」
首を固定してもらってから、二人に尋ねた。
「私たちはモルモン教徒です。
サンルイという小さな町に宣教教会を開いたばかりで、そこの手伝いに行こうとして車で通りかかりました。」
女性が答えた。
こうして私の人生で最も長く、最も忘れ得ぬ日々が始まった。
救急車が到着すると、隊員たちは私を頑丈なボディーボードに縛りつけ、頭が動かないようにテープを巻き、ネックブレスで固定した。
一時間ほど車を走らせてアラモサの町に着くと、すったもんだしながらストレッチャーに移され、病院の救急室に運ばれた。
〔2月26日へ続く〕
God Bless You!!
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