2023年11月17日(金)

中国のある哲学者は、目的地に気をとられずに、出発点を振り返ってみることができるよう、ロバには後ろ向きに乗るべきだと言った。

聖書もいくぶん、それに似た働き方をする。
書簡から投げ返される光によって、福音書の出来事が新しい目で理解されるのだ。
書簡も福音書も、旧約聖書を逆から照らしている。

「預言者たちの言ったように」という言葉は、何世紀もの間、人々が信仰に至るのに最も強い影響を与える言葉の一つだった。

殉教者ユスティノスは、旧約聖書の預言が正確であるという印象を受けて回心したと言った。
フランスの優れた数学者ブレーズ・パスカルも、預言の成就が自分の信仰における重要な要素であると言った。

今日、占いのように未来を知る手がかりを探すとき以外は、預言書を読むクリスチャンはほとんどいない。
宗教改革者たちは、旧約聖書と新約聖書の間には統一性があるという深遠な感覚をもっていたが、私たちはそれを失っている。

現代文明を理解し聖書を理解することは、旧約聖書を読む重要な理由かもしれないが、最も重要な理由は本書のタイトルが暗示していると思う。

つまり、旧約聖書とは「イエスが読んだ聖書」なのだ。

イエスは自分自身や自分の使命に関する重要な事実の根源を、すべて旧約聖書の言葉に求められた。
旧約聖書を引用して、パリサイ人やサドカイ人、サタン自身といった敵対者との言い争いを解決された。

神の子羊、羊飼い、ヨナのしるし、家を建てる者たちの捨てた石という、イエスがご自分を定義するのに使われたイメージは、そっくり旧約聖書に由来していた。

かつて行政がキリスト教の正典から旧約聖書を切り離そうとしたことがある。
ナチス・ドイツが、この「ユダヤ人の書物」の研究を禁じたのだ。

そして、旧約聖書についての学識は、ドイツの神学校や雑誌から消えてしまった。

1940年、ディートリッヒ・ボンヘッファーは大胆にも詩篇に関する書物を出版して罰金刑を受けた。
彼は、自分はイエス・キリストご自身の祈りの書を説き明かしたのだと説得力のある議論を文書に展開して無実を訴えた。

ユダヤ教の正典がまだ正式に決まっていなかったにもかかわらず、イエスが旧約聖書をしばしば引用したことにボンヘッファーは注目した。

しかも、旧約聖書の多くの部分が明らかにイエスを指していることをほのめかしているのである。

God Bless You!!