2023年1月31日(火)

2023年1月31日(火)


『善を毒すること』

〔1月30日の続き〕

数日後、地球の反対側から送られたEメールを読んで、ポール・ブランド博士が7月8日に息を引き取ったことを知った。
89歳の誕生日を迎える一週間前だった。

その週はずっと、何気ないときに・・・目覚めたとき、シャワーを浴びているとき、祈っているとき・・・すすり泣いていた。

「どうしたの?」
初めの何回か妻がそう尋ねてきた。
「ブランド博士に会いたいんだ」としか言葉を返せなかった。

心の中ではこんな言葉を続けていた。
「自分はまだひとり立ちできていない。」

記念会でスピーチをする番がきたとき、靴と靴下をまず脱いで裸足になった。
このささやかなやり方が、博士を讃えるにふさわしいと、なぜか思えたのだ。

博士は「靴とシャツの着用なしにはサービスを受けられない」という方針に反対し、どんなときでも靴を脱ぎ、痛みを感じないハンセン病患者の足・・・きつい靴やごわごわしたサンダルは危険である・・・の保護に最善の方法を、何千時間も研究し続けた。

私はまだひとりで歩けない。
だが、この危険極まりない信仰の旅路を何はともあれ歩くことができるのは、信仰の一巨人から受け取った強さによるところが大きい。

森にそびえる木に寄りかかるように、私はこの人に30年も寄りかかってきた。
その記念会で聞いたように、ポール・ブランド博士が残した並木は、はるか遠くまで伸びていて、多くの大陸に広がり、仲間の外科医たちばかりでなく、看護師、ハンセン病患者、隣人たち、そして博士に接した人々に影響を与えた。

「わたしのためにいのちを失う者はそれを見出すのです」。

イエスの言葉の中で最も頻繁に引用されるこの言葉を、博士ほどよく描写している人を私は知らない。
成功にこだわる文化の観点からすると、この世で最も貧しく、最も虐げられている人々の間で、自分の人生と仕事を全うした整形外科医は、「自分のいのちを失う者」の手本である。

ブランド博士は、謙遜と感謝と壮大な冒険の精神をもって、私の知るだれよりも充実した豊かな人生を生きた。
博士の共著者として、その生涯に光を当てる役割を得てきたことをありがたく思う。

信じるにはたった一人の聖人に出会えばよいのであり、私はくつろいだ時間を過ごしながら、傑出した、イエスの忠実な弟子を知る特権にあずかったのだ。

ポール・ブランド博士、本当にありがとう。

God Bless You!!


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