2023年10月14日(土)

2023年10月14日(土)


『そのような場所で歌うこと』

私はロンに、今まで行ったなかで最悪の環境の刑務所はどこかと尋ねた。
ロンはしばらく考えたあと、チヤック・コルソンと訪ねた、ザンビアの全く自由のない刑務所のことを話し始めた。

案内役を務めたネゴは元囚人で、所内にある凶悪犯を収容する秘密の監房について説明してくれた。

「私たちは鉄の網で覆われた鉄製の檻のような建物に近づいて行った。
この檻の中に監房が幅約4メートル半、長さ約12メートルの狭い中庭を囲んで並んでいた。

囚人たちは一日のうち23時間は狭い監房に入れられ、全員が一度に横になることはできない。
ただ1時間だけ狭い中庭を歩くことが許されている。
ネゴはその施設で12年間耐えてきたのだった。」

「秘密の監房に近づいて行くと、多くの目が鉄の門の下のわずか五センチほどの隙間から私たちを見つめているのに気づいた。
門が開いた途端、私は今まで見たこともない惨状を目にした。
衛生設備は何もなく、実際、囚人は食事用の皿に排泄しなければならなかった。

アフリカの灼熱の太陽が容赦なく鉄の壁に照りつけていた。
その場の吐き気をもよおす悪臭に、私はほとんど息もできなかった。
こんなところでどうやって人間が生きていけるのか、とても信じられなかった。」

「ところがネゴが私たちを紹介すると、驚くことが起こった。
120人の囚人のうち80人が後ろの壁に沿って列を作って並んだ。
だれかの合図で彼らは歌い出した。

賛美歌だ。

クリスチャンの歌う賛美歌で、非常に美しい四部合唱だった。
ネゴはこのうち35人が死刑宣告を受けていて、じきに刑が執行されると私に耳打ちした。」

「彼らの澄みきった美しい表情と、ぞっとするような環境との対比に圧倒された。
彼らの真後ろの壁に炭で丹念に描かれた絵があるのを、暗闇の中に見つけた。
十字架にはりつけにされたイエスだった。

囚人たちは何時間もかけてこの絵を描いたに違いない。
私は強い力に打たれた。
啓示の力だ。
キリストが彼らとともにここにおられ、苦しみ、嘆きを分かち合って、このような場所でも賛美できるほどの喜びを与えておられるという啓示だった。」

「私は何か励ましの言葉を語る予定だった。
しかし、ほそぼそとあいさつの言葉を口にしただけだった。
彼らこそ先生だった。私ではなかった。」

God Bless You!!


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