2023年10月13日(金)
『鉄格子の中の教会』
私はラテンとペンテコステ派のムードいっぱいの礼拝の真ん中で座っていた。
目に見えるいくつかの特徴を除けば、私は自分がチリ最大の刑務所にいるのをほとんど忘れていた。
会衆の様子を見回した。
いるのは全員男で、つぎはぎの古着を着ていた。
びっくりするほど多くの人の顔に傷痕があった。
賛美のあと、白いワイシャツにネクタイという目立つ格好のカナダからのゲストが演壇に上がった。
刑務所のチャプレンが会衆に、このロン・ニッケル氏はこれまで五十か国以上の刑務所を訪問していると紹介した。
彼が責任者を務めるプリズン・フェローシップ・インターナショナルは、キリストの福音を服役者に伝え、政府に刑務所の待遇改善を訴えている、と。
十数名の囚人が「アーメン!」と大声で叫んだ。
「世界中の刑務所にいる、キリストにある兄弟姉妹から皆さんにごあいさつを申し上げます。」
ロンはスペイン語通訳の話す間をあけながら語り出した。
「特に皆さんに、アフリカのマダガスカルという国にいるパスカルからのごあいさつを伝えます。
ある日、彼は学生のストに参加して逮捕され、800人用の施設に2500人が収容されている刑務所に入れられました。
肘と肘がくっつき合うようにしてむきだしの板の上に座り、ほとんどの囚人はぼろを着て、シラミにたかられていました。
皆さんもそこの衛生状態は十分理解できると思います。」
熱心に聞き入っていたチリの囚人は同情して大きなうめき声をあげた。
「パスカルは本を一冊だけ刑務所に持ち込むことを許されました。
家族が差し入れた聖書です。
彼は毎日聖書を読み、無神論の信念をもっていたにもかかわらず、祈るようになりました。
三か月が経つころには、パスカルは毎晩、窮屈な監房で聖書の学びを指導するほどになっていました。」
「驚いたことに、パスカルはこのあと釈放されました。
けれども、もっと驚かされることがあります。
パスカルはその後も刑務所に通ったのです。
週に二度刑務所に通い、聖書を語り、配りました。
金曜日には野菜スープのいっぱい入った大鍋をいくつか持って行きました。
刑務所の囚人は栄養失調で死にそうだったからです。
囚人の多くは食べ物を盗んで投獄されていたのです。
彼らは刑務所に入る前から飢えていました。」
外国からの訪問客が抱きしめられたり、握手を求められたりしながら去っても、囚人はみなそこに残っている。
これはまだ前説にすぎない。
God Bless You!!
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