2023年5月4日(木)

2023年5月4日(木)


『天国の影』

物質の世界だけを見ている人々の中にさえ、もう一つの世界を示すしるしは密かに入り込んでいる。

あえて神とか設計者の神といった言葉を使わない科学者たちが、代わりに語るのは、創造物に明らかな「人間原理」だ。

地球という惑星に生命が宿るよう、自然は絶妙に調整されているという。
重力の法則が1%上下にずれていたら宇宙は形成されなかったし、電磁力にほんのかすかな変化があっても生物の分子は付着しないというのだ。

物理学者フリーマン・ダイソンの言葉にあるように、「宇宙は私たちがやってくることを知っていた」ようだ。

最高の知識をもつ人たちには、宇宙はいきあたりばったりの賭けには見えない。
宇宙には紛れもない目的があるようだ。

しかし、それはどんな目的だろうか。
そして、だれの目的なのか。

私は、神学者よりも世俗の科学作家の中に崇敬の念があるように思う。
その中でも博識な人たちは、私たちの知識は拡大する一方だが、それは人間の無知のプールがそれだけ広がることを暴露するだけだと言っている。

ニュートン物理学のように明確で合理的だと思われていたものが、巨大な謎に道を譲ったのだ。

私の生まれた時点から今まで、天文学者たちは銀河系を700億も多く「発見」してきたが、宇宙の構造の96%を見逃してきたかもしれないこと(「暗黒のエネルギー」と「暗黒の物質」」、ビッグバンの起きた時期を40億年から50億年前に調整したことを認めた。

望遠鏡より顕微鏡をのぞくことの多い生物学者たちが発見してきたのは、最も単純な細胞の中にある測り難い複雑さだ。

しかし皮肉なことに、還元のプロセスは世界をいっそう複雑にすることはあっても、その逆はしなかった。
各細胞内のDNA分子には、「人体の不思議展」にあったすべての解剖体を監督・統制できる、30億文字のソフトウェアコードが入っている。

コードは次々に解読されているが、だれがこのコードを書いたのだろうか。
それに、なぜ書いたのか。

各細胞内のマイクロコードだけでなく、全惑星、宇宙を支配しているマクロコードの解読を指南できる人がいるだろうか。

もう一つの世界を語る声は芸術にも浸透している。
詩人、画家、小説家、脚本家など、一つの宇宙を創造することをいくらか知っている人たちは、その源を感知できなくても、心の震えを感じている。

芸術家にとって、世界は、ベートーベンの弦楽四重奏やシェイクスピアの『ハムレット』のように、被造物として姿を現す。

私たちが神の音楽であり神の言葉であるとしたら、どんな調べを奏で、どんな言葉を語るのだろうか。
「地球が天国の影だったら?」というミルトンの疑問は、時を超えてこだましている。

God Bless You!!


a:13 t:1 y:0