2023年5月3日(水)

2023年5月3日(水)


『神なき世界』

チェコ共和国の元大統領バーツラフ・ハベルは、共産主義文化を生き延びた人物だが、大まじめに神なしで生きようとしたその文化の問題を、次のように述べている。

「人間は、神を喪失したために、絶対的で普遍的な、いわば座標システムを失った。
人間はいつでも、どんなことでも、主として自分自身を、この座標に関係させることができた。
人間の世界と人間の人格は徐々に壊れてゆき、別の相対的な座標にふさわしい、ばらばらで統一性のない断片になった。」

ハベルは、マルキストによる土地の破壊は、無神論がまっすぐ行き着いた結果であると考え、こう言った。
「私は、森林が死にかけ、川が下水溝のようになり、市民が窓を開けないようにと勧告されることもある国から来ました。」

そして、その原因は、「自然のすべての主人として、また全世界の主人として、自ら王位に就いた新時代の人間の傲慢」にあるとした。

そのような人間には形而上学的な錨が欠けている。
「つまり、被造物全体への畏敬の念や、それに対する人間の義務の自覚……です。
親が神を信じていれば、子どもたちがガスマスクをつけて通学することも、目が膿で見えなくなることもないでしょう。」

私たちは危険な時代に生きている。
環境だけでなく、テロリズムや戦争、過剰な性的関心、世界的な貧困、生と死の定義についても差し迫った疑問に直面している。

社会は道徳というつなぎ縄、ハベルの言う「座標システム」を切実に必要としている。
私たちは宇宙における自分たちの場所や、人間同士の義務や地球に対する義務を知る必要がある。

こうした質問に、神を抜きにして答えることができるだろうか。

現代文学は、無意味な宇宙の中であくまでも自分の立場を堅持する反逆者を英雄としてもちあげている。
進化論哲学は、ホモ・サピエンスを取り上げ、他種とほとんど変わらず、利己的な遺伝子を書き込まれて生きながらえていると言う。

この二つの世界観のいずれもが、私たちの未来にとってきわめて重要かつ驚異的なものを欠いているとしたら、どうだろうか。

通過するマゼランの船をあっさり見過ごしてしまった南米の先住民と同じではないか。

God Bless You!!


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