2023年4月23日(日)

2023年4月23日(日)


『理想の炎』

ロシアの作家トルストイから、神の断固たる絶対的な理想を深く尊敬することを学んだ。

トルストイは、福音書の中で出合った倫理的理想に強烈に惹きつけられた。
しかしその理想を目ざしながら挫折し、最後は疲れ果ててしまった。

トルストイは山上の説教にそっくりそのまま従おうと懸命に努力したが、そのきよらかさを求める激しさに、家族は程なく大きな負担を感じ始めた。

たとえば、イエスが裕福な男にすべてを与えよと命令した箇所を読むと、トルストイは農奴を解放し、版権を譲り、広大な所有地を手放した。

野良着に身を包み、靴を手作りし、畑仕事を始めた。
妻のソニアは、一家の財政的安定が失われようとしていることを腹にすえかね、夫に抗議して、いくらかの譲歩を引き出した。

トルストイの日記を読んだとき、私は完璧主義に向かって突進していた自分の過去をフラッシュバックのように思い起こした。

トルストイの日記には、家族との争いもさることながら、それ以上にトルストイ自身の中にあった闘いが多く記録されている。

トルストイは完全を目ざそうとする試みの中で、新しい規則のリストを考案し続けた。
狩猟、喫煙、飲酒、肉食をやめた。

「心の強さを発達させるための規則。
高尚な感情を発達させ、下劣な感情を排除するための規則」の下書きをした。

しかし、その規則を守るのに必要な自己修練は、一度もやり遂げることができなかった。

トルストイは何度か純潔を公然と誓い、寝室を夫婦別々にしょうと言った。
だが、その誓いを長く守ることはできなかった。
ソニアの十六回に及ぶ妊娠は、誓いを守る力がなかったことを臆面もなく世に知らしめた。

トルストイはしかし、偉大な善行を成し遂げてもいる。
たとえば、長く中断した後に書いた最後の小説『復活』は、71歳の時にドゥホボール派−−−皇帝が迫害した再洗礼派グルプ−–−を支持して書いたもので、その印税すべてを同派のカナダ移住資金として献げている。

また山上の説教から直接取り上げたトルストイの非暴力哲学は、彼の死後も長く衝撃を与え続け、ガンジーやマーティン・ルーサー・キング・ジュニアたちに受け継がれて、実を結んだ。

〔4月24日に続く〕

God Bless You!!


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