2023年4月12日(水)

2023年4月12日(水)


『健全なスタート地点』

ポール・ブランド博士は、生涯のほぼ半分を暮らしたインドを心から愛していた。
博士の案内でインドをあちこち見て回った私には、現地の医療のことが深く記憶に刻まれている。

インドの医療は欧米のそれとある意味では何も変わらない。
だが、いったん町を出て、百万にも及ぶ村に行けば、医療は紛れもなく冒険の領域に入る。

殺菌した水が手に入らないインドで、医師はどうやってコレラ患者に水分補給をするのか。
採れ立てのココナッツを点滴スタンドに吊るすのだ。

気密性の高いココナッツの中のグルコース混合液には、医療用品店のどんな製品にも劣らないほどの、水分も栄養も含まれている。
そうはいっても、長いゴム管が患者の腕から緑色に光るココナッツへ伸びている様には違和感を覚える。

ベロールのクリスチャン医科大学病院は、アジア有数の医療機関として高く評価されてきた。
ところが、学生に過剰とも言える教育を授けているのとは裏腹に、この大学は別院を建てた。

通気性のある土壁と藁ぶき屋根という造りで、村と同じ環境にしているのが特徴だ。
別院で受ける授業は必須で、インドのどんな辺鄙な村でも揃う器具だけを使う医療を学んでいる。

クリスチャン医科大学の支援者たちは、その辺鄙な村々を定期的に訪問している。
毎月特定の日に、若い医師や助手たちは大学のバンに乗って村へやって来ると、検査台を設置し、注射や骨接ぎ、簡単な手術などを行う。

何千人もの患者が、自分の暮らす村で毎月医療を受けられる。
ある統計によると、インドの人口十億のうち、三%に満たないクリスチャンが、この国の保健医療の18%以上の責任を担っている。

それは、忠実に神に仕えた宣教団の200年にわたる働きがあったからだ。
家父長的な宣教師には多くの失策もあったが、それでもクリスチャンはインドに教育と医学という素晴らしい財産を残した。

インドの農夫が「クリスチャン」と聞いて——イエス・キリストを聞いたことはないのだろう——思い浮かべるのが、月に一度村にやって来る医療バンであったとしても、おかしくない。

キリストの名前で、無償で手当てをしてくれた人々の面影が浮かぶのだ。
それが福音のすべてではないが、出発点としては決して悪くない。

God Bless You!!


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