2023年4月1日(土)

2023年4月1日(土)


『恵みに飢え渇いて』

1991年のロシアで目にしたのは、恵みに飢えた国民だった。
経済というより社会全体が急激に下落した状態にあり、だれもがだれかを責めていた。

ロシア市民は、虐待を受けた子どものようだった。
頭を低く垂れ、つかえながら話し、視点が定まらない。
彼らはだれを信頼すればよいのだろう。

モスクワの集会で見たジャーナリストたちの涙は生涯忘れないだろう。
ジャーナリストが泣くところをそのとき初めて見た。

それは、「プリズン・フェローシップ・インターナショナル」のロン・ニッケルが、今やロシアの流刑地で急成長している地下教会の話をしたときのことだ。

70年間、刑務所は真理の宝庫、人が神の名を何の妨げもなく口にすることができる場所だった。
ソルジェニーツィンらが神を見いだしたのは、教会ではなく刑務所の中だった。

ロン・ニッケルは、内務省の高官を務める将軍と交わした会話についても語った。
将軍は年老いた信者たちから聖書の話を聞いて素晴らしいと思ったが、あくまで芸術品のような鑑賞物ととらえ、信じる対象と考えてはいなかった。

しかし最近起きたある出来事によって、考えを改めた。

1991年の暮れ、ボリス・エリツィンは、国、地方、地域すべての共産党事務所の閉鎖を命じた。
将軍は解体作業の警備に当たった。

「党の幹部のだれ一人、そう、解体作業を目の前にだれ一人、抗議をしませんでした。」
将軍はそう言ってから、教会を破壊し、神への信仰を踏みにじった無神論の70年間と対比させた。

「どんなイデオロギーが生まれ、滅びても、キリスト教信仰が廃れることはありませんでした。
教会は今、私が見たことのないかたちで息を吹き返しています。」

1983年のイースターの日曜日、ユース・ウィズ・ア・ミッションのグループが、大胆にも赤の広場で横断幕を広げて見せた。

ロシア語で「キリストはよみがえった!」と書かれた幕だ。
ロシアの老人の中にはひざまずいて泣く者もいた。

すぐさま兵士らが賛美歌を歌う人々を取り囲むと、横断幕を引き裂き、人々を刑務所に押し込んだ。
それから10年足らずのイースターの日曜日、赤の広場一帯で人々は昔ながらの挨拶を交わしていた。

「キリストはよみがえった!」……「キリストは本当によみがえった!」と。

God Bless You!!


a:12 t:1 y:0