2023年1月26日(木)
『深夜の教会』
特定宗派に属さず、専任のスタッフももたずに、毎週何百万人もの熱心な会員をひきつけている「教会」を訪ねたことがある。
それはアルコホリック・アノニマス〔訳注=アルコール依存症者自主治療協会。略してAA〕という名で知られている。
飲酒の問題を抱えていることを告白してくれた友人がいて、彼の招待でそこへ行った。
「来いよ」とその友人は言った。
「そうすれば初期の教会がどんなふうだったかが、ちらっとわかると思うよ。」
月曜日の夜12時に、今にも倒れそうな家に入った。
その日、そこではすでに6回の集会がもたれた後だった。
むっとするような煙草の煙が催涙ガスのように充満していて、目を刺してきた。
友人がなぜAAを初期の教会になぞらえたのか、その理由はすぐにわかった。
「分かち合いの時間」は、小グループに分かれて行われた。
共感をもって耳を傾け、温かく受け答えをし、幾度も肩を抱き合って、時間は進んでいった。
出席者それぞれが依存症とどう戦っているかの経過報告をした。
私たちは笑い、そして泣いた。
会員は、真正面から顔を合わせられる人々に囲まれて喜んでいるように見えた。
正直でいればそれでよかったのである。
そこにいる人はみな、同じ問題を抱えている仲間だった。
AAは資産を所有せず、本部も広報センターももたない。
米国中を飛び回る有給のコンサルタントや投資顧問といったスタッフもいない。
AAの創設者たちは、あえて官僚主義につながりそうなものをすべてなくすようにしていた。
一人のアルコール依存者がほかのアルコール依存者を助けるために自分の生活をささげる、という基本を守ってこそ、AAのプログラムはうまくいくと信じてのことだった。
これまでにこの方法が十分に功を奏することが証明されてきたため、チョコホリック・アノニマス〔訳注北チョコレート依存症者のための互助グループ〕から癌患者の互助グループまで250もの団体がこのテクニックを模倣して、それぞれ12ステップ〔訳注依存症からの回復を目指してつくられた12のステツプ〕のプログラムを創設した。
友人にとっては、AAとの深い関わりは、文字どおり大きな救いだった。
少しでも足を踏み外せば死が待っているかもしれない、いや、間違いなく待っていると、彼にはわかっていた。
AAの仲間は幾度か午前4時に彼からの電話を受けて、終夜営業のレストランに駆けつけ、そこに駆け込んでいる彼を見つけた。
叱られ罰を受けている学校の生徒のように、彼は「神様、あと5分で構いません。助けてください」とノートに書き続けていたという。
God Bless You!!
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