2023年1月10日(火)
『影のメンター』
宇宙三部作を読んだのが、C・Sルイスとの出会いだった。
三部作を読んで、私の土台は徐々に浸食されていった。
ルイスには超自然的なものを信じさせる力があり、私はこう問わざるを得なくなった。
「これが本当に真実だったら、どうだろう。」
私が大学生活を送ったのは1960年代の終わり、ルイスが1963年に亡くなって数年経ったころだ。
相手とディベートするように彼の著作と取つ組み合ったが、彼に惹かれていることを渋々認めるようになった。
ルイス自身がさんざん抵抗し、叫び声をあげながら神の国に入っていたからだ。
以来、ルイスはいつも同志であり、いわば影のメンターとして、私のそばに座し、執筆スタイル、思考、ビジョンの向上を促し続けてくれている。
影のメンターのルイスから執筆スタイルを学び、今も手本にしている。
ウィリアム・ジェイムズの言葉を引用すると、「計面上学的・宗教領域において、正確な理由が説得力をもつのは、現実的に好意的な印象をすでに得ているときだけである」。
つまり、人は現実に対する直観と一致しない論理的な議論をめったに受け入れないのだ。
その直観を養うことが作家の取り組むべき課題である……ルイスの宇宙三部作は、彼の護教論に出合う前の私に、そのことを行ったのである。
ルイスはもともと無神論者で、信仰に疑念をもっていたため、彼の言葉を受け入れようとしない読者にも、生涯にわたって理解とあわれみを示していた。
神と勇猛にも綱引きをしたが、綱の反対側を握っていた神は、ルイスの想像していた神とは全く異なっていた。
私も同じように、怒りに満ちた律法的な教会によってひどく害されていた神のイメージを克服しなければならなかった。
宇宙のいじめつ子に激しく抗いながら、神の恵みとあわれみを見いだした。
C・Sルイスが、著作のヒツトと、それらに基づいて製作された映画や続編の大成功を予想していたとはとても思えない。
生前、そのことを知らされていたら、彼は警戒して尻込みしていただろう。
ルイスは事あるごとに、私たち作家は名詞ではないと口にしていた。
作家は、真理という偉大な名詞を指し示す形容詞にすぎないのだ、と。
ルイスは忠実に、そしてきわめて見事に真理を指し示し、そのおかげで多くの人が真理という名詞を知り、愛するようになった。
私もその一人である。
God Bless You!!
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