2020年6月6日(土)
『イエスは彼を見つめ、いつくしんで……。』マルコの福音書10章21節
ナポレオンには、彼が「親衛隊」と呼ぶ選り抜きの兵士の一団がいた。
彼は、兵士たちが何があっても忠誠を尽くす者として信頼できることを知っていた。
度重なる不安な瞬間にも、親衛隊を頼みにすることで安心するのだ。
彼らはナポレオンを守り、心底忠実だった。
ところがある日、親衛隊に反逆があるという噂がナポレオンの耳に入ってきた。
さあ、どうする。
ナポレオンは親衛隊を宮廷に呼び出した。
彼らが中庭で待機しているとき、ナポレオンは一人、謁見室で床よりわずかに高い壇の上の皇帝の椅子に座っていた。
親衛隊は、これからどうなるのだろう、と不安になった。
偉大なる指揮官がお出ましになり、自分たちを叱責し、威嚇するのだろうか。
自分たちは引っ立てられて投獄され、罰せられるのだろうか。
指揮官はいったいどうなさるだろう。
伝令がやってきて、親衛隊は一人ずつ、ナポレオンの面前に出るよう命じられた。
最初の兵士が後方の扉から入っていくと、扉は閉められた。
そこでは皇帝と二人きりだった。
兵士は玉座に向かって歩いていき、一言もしゃべらずに、ナポレオンと顔を合わせて立った。
ナポレオンが兵士の目をひたとのぞきこむと、兵士も指揮官の目をじっと見つめた。
それからナポレオンは片手を差し出した。
二人は握手をし、兵士は部屋を出た。
次に別の兵士が部屋に入り、一言もしゃべらずに玉座に歩いていった。
立ち止まってナポレオンを見つめ、握手し、部屋を出た。
次の兵士も部屋に入り、同じように見、同じように握手した。
そしてまた次も、一人ずつ、同じことを繰り返した。
こんなふうにして親衛隊は一人残らずナポレオンの面前を通った。
そうやって全員が通過したとき、反逆は永遠に終わりを告げたのである。
親愛なる友よ、あなたは自分の主の御前に出ようとするだろうか。
御顔を見つめ、信仰の手を伸ばして御手の中にすべりこませようとするだろうか。
あなたのために釘を打たれたその手の中に。
あなたに言っておきたいのは、こんなふうに主のもとに来れば、あなたの反逆は消え失せる、ということだ。
ただ主を見つめ、手を差し出す。
そして主の恵みの御手に握りしめられたら、あなたはもう主のものである!
リンゼー・グレッグ
私が神を見つめ、神が私を見つめてくださった。
私たちは永遠に一つとなった。
チャールズ・スポルジョン
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